›8 29, 2007

魔笛

 ケネス・ブラナー監督の魔笛を観てきた。1回は妻と。もう1回は一人で。魔笛は不思議な物語だ。勧善懲悪の物語なんだけど、善玉と悪玉が途中で入れ替わる。このちぐはぐに人々は大いに頭を悩ましてきた。ある人はそれは矛盾であり三文小説より下らない、魔笛はただモーツァルトの音楽のためだけに未だに価値があると考え、ある人はそれは矛盾などではなく、意味のある転換であると考える。ゲーテは後者だったらしく、魔笛を観て自らのファウストをオペラ化出来るのはモーツァルトだけだと述べている。  ケネス・ブラナーの演出はすばらしく、これまで何回か魔笛を劇場で鑑賞したけれど、はじめて好きになった。奇をてらうところがなかったのと、愛の物語にフォーカスしたのが良かった。魔笛には色々な要素があるので、どこに力点を置くかでずいぶんと違った印象になる。何かしてやろうという演出家の気持ちは分かるけど、あまりやりすぎるとひどい有様になる。この前、新国立で観たセビリアの理髪師がまさにそうだった。この楽しい喜劇をよりおもしろく仕立ててみせようという魂胆が丸見えで、すっかりしらけてしまった。セビリアの理髪師は普通に上演すればそれで十分楽しい(歌手がちゃんと歌えていれば)。だから、どぎつい演出などではなく スパイスをきかせた上品なユーモアの方がたいていうまくいく。もちろん例外は付き物でどぎつい演出がうまくいった例もあるにはある(1976年のニューヨークシティーオペラの公演)。 


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