›7 23, 2007

尾瀬

 妻と尾瀬に行ってきた。山道を下っていくと、見渡す限りの湿原が現れた。湿原のまわりを低い山々が囲んでいる。ぼくたちは湿原の中に設けてある木製の通路を少ししゃべりながら歩いた。帰りのバスの関係からどこまで行って引き戻してくるのか考えなければならなかった。ぼくは疲れてしまい、少し休もうと言って、朽ちかけたベンチに座った。宿の人に山だから天気が変わりやすいと言われて、ぼくたちは傘を持参していた、ところが快晴で雨は降りそうにもない。傘はホームズのステッキのような役割を担っていた。傘の先で色々な茂みをつつく。傘をぶらぶらさせてぼくはすっかりホームズの気分になっていた。それで、ぼくは隣に座る老夫婦のしゃべ ることに聞き込んでいた。夫が妻に尾瀬に伝わるいにしえの物語を語っている。老いた妻はああ、そうですかと聞いて、時折あれはなんですか、と尋ねる。ぼくは素晴らしい自然の中でそういった会話に触れすっかり感動してしまい。妻にどうしたの?と聞かれたが、答えることが出来なかった。  ぼくたちはまた歩き出した。カエルの合唱が聞こえてくる。サラウンドで。すぐ足下にもカエルはいるようだった。ぼくはホームズのステッキで足下をつついた。妻も茂みをつついた。しかし、カエルはいない。  妻と相談して決めた折り返し地点まで来た。ぼくはすっかり体力を消耗していた。妻は、頑張ってと言ってぼくをリードして歩き始めた。時折、ぼくがきちんと付いてきているか確認するため、後ろを振り返りながら。ぼくはまたしても不思議な感動に襲われた。
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